第92話

「いや…、俺はケンがうちに来た時に異変に気付いてやれなかったから…。


アイツが電話して来てくれて良かったよ」


そう答える。



ケンがガクに電話をかけて来なかったら…。


そう思うとゾッとする。



「また顔出すよ」


私達は外が明るくなってから家に帰った。



「すげぇ疲れた…」


ガクの心が弱っているのが伝わる。



「仕事、どうするの?


休んだ方が良くない?」



「そうだな…休む事にする。


ノンも寝てないんだから学校は休めよ」


ガクが仕事を休むのは珍しい。


よっぽどショックなんだと思う。


私もショックだ。



まさか、あの強いケンが…。


鈴の死と、下半身不随の大怪我を乗り越えて来たのに…。


3人で食事をして、鈴が居ない悲しみが甦ってきたのだろうか。



ケンと話してみなければわからない。

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