第91話

1時間くらい待っただろうか…。



中から看護師さんが出てきた。



「ご家族の方、中へ」


ガクと私も家族として中に入れてもらえた。



「担当した医師の西島(にしじま)です」


男性医師が挨拶する。



「非常に危ない状態でしたが、一命は取り留めました。


あと10分遅ければ間に合わなかったかもしれません。


腸内洗浄をして、今は眠っています」



「良かった…」


私はガクの手を握った。



「ああ、良かった」


ガクの手も震えている。



「今夜はこの救命救急センターで様子を診ます」


医師は言う。



「本人には会えないんですか⁉︎」


とお父さん。



「ご本人は眠っているので、世が明けたらまた来て下さい」


そう言われた。



廊下に出ると、お母さんがガクの手を握る。



「ガクちゃん、ありがとうね!


ガクちゃんはケンの命の恩人よ!」

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