第65話

可愛い甚平に着替えてサウナに入る。


中にはもう勇気君がいた。


私はタオルを被り顔を隠す。



「何で顔隠してるの?」


勇気君は笑った。



「スッピンだから。見せられない」


彼氏じゃないから、お泊まりする事もないしスッピンを見せるのは初めてだ。



「若いから大丈夫だって。


花音はナチュラルメイクに見えるし」


そう言いながらも、無理に見ようとして来ない所が大人だ。


ガクはサウナが苦手だった。


だから、このサウナは初めて。


思い出が詰まった場所じゃなくて良かった。



このホテルで最後に愛し合った日の事を思い出す。


私はもう別れを決めていて、それでも最後にと抱き合った。



「花音?」



「えっ?」


スッピンな事を忘れて勇気君を見た。



「何で泣いてるの?」


私は慌てて頬を拭う。



「泣いてるんじゃないよ!


これは汗だよ」


勇気君はそれ以上聞かなかった。

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