第64話

私はもうすぐ3年生になる。


週末は相変わらず勇気君と会っていた。



「今日は何処に行くの?」


勇気君の車の助手席は、私しか乗らない。



「今日は日帰り温泉。


サウナと岩盤浴は一緒に入れるらしいよ!」



「楽しみ!私、サウナ大好き!」



「俺も。平日は週3でサウナに行ってるよ」


毎週会っているけど、まだまだ知らない事がある。



"一緒に入れる"って勇気君が言っても、全然下心を感じないし不愉快じゃない。


日帰り温泉って所が勇気君らしい。



私達はドライブをしながら温泉に向かった。



「到着。ここだよ」



「えっ……ここ?」



ドキッとした。



ガクが特別な時に連れて来てくれた温泉リゾートホテルだ。


確かに日帰り入浴もやってるってガクが言っていた。



「花音、来た事あるの?」


「ううん、来た事ないよ」


私はどうしてそう答えたんだろう。


理由のわからない嘘をついた。



日帰り入浴は入口が違って、初めて通る通路だった。


それだけで少し安心した。



もう思い出したくない。


心が拒絶している。

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