最強の男

第20話

私は307号室の前に立った。


どうかユズさんが居ますように。


ゆっくりと扉を開けた。


静かな病室。


そこには純さんしか居なかった。



私は椅子に座り、純さんに話しかける。



「純さん、起きてください。


起きてくれないとガクが…ガクが私の手から離れてしまいます。


お願い、純さ…」



ガチャ!



扉が開いた。



「あら、ノンちゃん…だったよね?」


ユズさんは手にタオルを持って入ってきた。



「はい、朝比奈 花音です。


"かのん"で"ノン"です」


立ち上がり頭を下げた。



「私は飯島 柚鈴(いいじま ゆず)よ。


よろしくね」



ユズさんはスッピンで、髪も無造作に束ねていて、服は清楚で、夜に会った時よりずっとずっと綺麗な人だった。

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