第17話

あの日、ガクの帰りが遅かった日。


ガクから感じた匂いは、病院の消毒の匂いだったんだと気付いた。


私達は無言のままタクシーで家に帰った。


タクシーの中でする話じゃないと思って。


ガクはあの日から今日まで、1人で悩んでいたんだと考えると、私の存在ってガクにとって何なんだろうって思わされる。


何でも話せる仲じゃなかったの?って。



もう外は明るくなってきている。


学校に行ってるどころの話じゃない。



玄関の鍵を開けて、靴を脱いでいるガクに後ろから抱きついた。



「ガク、お願い。断って欲しい。


私、1人でこの部屋でガクの帰りを待つなんて嫌だよ。


ガクが純さんみたいな目に遭ったら…私は生きて行けない」



ガクは私の手を握る。


「ノンはそう言うだろうと思って言えなかった…。


苦労してきたユズさんの事も、少しは知っているつもりだ。


ユズさんは純より年上の25歳。


純が襲われた日、取り乱しもせずに俺に連絡してきた。


これが17歳のノンならって考えると辛い。


泣かせるのは間違いないだろうし…」

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