第15話

合体されたふたつの机の間に広げられたわたしのノートでは、色とりどりなマーカーがちまちまと並ぶ丸文字を彩っている。

 読めそうな字でよかった、とほっと胸をなでおろす。


 視線をそろりと動かすと、すぐ隣には粟田くんの横顔があった。長い睫毛。整った鼻の輪郭。雪のように白い肌――。

 そこまで考えて、はっとして視線を移し、窓の外という定位置に戻す。

 ……なんだこれ。青春か。恋愛マンガか。


 微かに体を震わせながら、視界に映った青い屋根を意味もなく見続けて心を落ち着ける。

 気づかれない程度にちいさく深呼吸。



「……なんかあった?」

「っ、え?」



 意識しすぎていたのがバレたのか、と顔の温度が最大出力になったみたいにぽかぽか熱くなる。

 視線を粟田くんのほうへ戻すと、彼はノートを写す手を止めないまま「大丈夫?」と安定した声色でもう一度言った。



「最近〝人生つまんな〟って感じだけど。人間関係?」

「うわあー……」



 まさかの、そっち部門のだった。


 予想と違ったことにはホッとするけれど、全然ホッとできなかった。


 そんなにわたしの様子はわかりやすかったのか。

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