第13話

数列前に座って授業をきく彼女の背中さえ、視線を向けることに躊躇する。

 だから、わたしの視界には灰色の町しか映らない。



「……やっぱり面倒くさい」



 誰にも聞こえないような声でそうぽつりと呟く。



「わたしって、友達ほしいのかなあ」



 ひとりのほうが気楽だし、そちらの方を望んでいる気もする。

 だけれど、友人関係をすべて絶ってひとりになったとき、わたしははたして幸せなのだろうか。


 本音という名の太陽が、建前の積乱雲によって曇ってしまって薄れてくる。


 友達は作れ! という小学校の先生の熱血な言葉が蘇った。


 なぜ友達って作らなければならないのだろうか。ひととの繋がりって、そんなに大事なことなのだろうか。


 そう訊けば「そんなんじゃ社会にでてから――」なんてセリフを吐かれるのだろうか。

 彼女とのことを相談したら、わたしが悪いと言われるのだろうか。

 あーあ、面倒くさいなあ。



「――おい!」

「っ⁉」



 とつぜん近くで響いた英語教師の大声に、びくっと肩が跳ねる。

 ばくばくと心臓が音をたてる。


 ぼんやりしていたのがバレたのか。

 ひとりごとが聞こえていたのか。


 恐る恐る先生のほうをみる。



「匠、授業早々寝るなよー」



 匠、と呼ばれた名前から、あれ、と思う。

 標的はわたしでなくて、となりで突っ伏して寝てた粟田くんだったらしい。

 とりあえずよかった。

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