美里のはなし

第11話

最近、友達に嫌われている気がする。


 そんな疑念が確信に変わったのは、ついさっきのこと。

 ひんやりと冷たい感情を抱きながら〝友達に嫌われた〟という事実を過ぎるほど冷静に、頭のなかで処理している。



たくみー、次の授業のノート見せてくれよー」 



 張りのある大きな声に視線を横へ動かすと、クラスメイトの佐野さのわたりくんが、わたしの隣の席の粟田あわた匠くんに話しかけたところだった。


 佐野くんの栗色に染められている髪は夏の色という感じで、今日も爽やかさを醸し出す。

 ひとが良さそうと感じさせる猫目に、軽く着崩された制服。そんな佐野くんは、いつもどおり陽気に笑っている。


 そんな親友に話しかけられた粟田くんは、今日も気だるげな様子で言葉を返した。



「あー……、書いてない」

「そうだよなー、いっつも寝てる匠が、ノートなんて書いてるわけないもんなー」

「わかってんならわざわざ訊くな」

「今日が提出期限だし、提出くらいしたほうがいいぞって。授業態度で内申やばいだろ」

わたりに言われたくないんだけど」


 

 視界の端っこに映りこむ粟田くんは、くあぁ、と頬杖をついた状態で大きくあくびをする。

 それに、佐野くんが苦く笑うのが気配で分かった。



「あのなあ、匠はただでさえ目をつけられてんだからな。あの英語教師、今日も絶対当ててくるぞ」

「代わり頼んだ」

「いや、俺も答えわからないから」

「使えな」

「友達に向けられる言葉か! それは」



 叫ぶように突っ込む佐野くんの言葉に、気分が暗くなるのがわかる。


 違う。友人だからこそ放つことができる言葉だ。

 確かな信頼関係が、絆があるから言える。言われた側も笑って流せる。


 友情って、そういうものだよな。

 いいなあ。

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