第7話

 彼女になら、話せるかもしれない。

 適当なノリで聞いてくれる気がする。

 粟田くんもなにも気にならないはずだ。わたしの話なんて。


 誰かに話を聞いてもらうだけでもいい。

 そうすればこの気持ち悪い感情も、少しくらいは消えてくれるかもしれない。



「その……もしよければなんだけど、ちょっと愚痴聞いてくれないかな」



 目を丸くした彼女は、面白そうににやりと口の端を引き上げた。



「わたしのこと栞って呼んでくれるなら、いいよ」



 そうして、わたしは気持ち悪い感情を吐き出すように、栞ちゃんに話した。


 わたしはひとりでいたいのに、友人に仲良くもない女子たちのところへ強引に連れられること。

 それに「無理」のひとことが言えないこと。

 休み時間が楽しくないこと。

 あとは女子の、キャハハ、という笑い声が苦手なことなんかも。


 一度口をひらくと蛇口をまわした水道のように言葉がとめどなく溢れてくる。

 そんなふうに愚痴っている自分は想像以上にストレスが溜まっていたのだと、驚いてしまった。


 話している途中、栞ちゃんは「ふんふん」と頷きながら聞いてくれていた。

 粟田くんはまあ、聞いていたのかはわからない。

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