第6話

 嫌い、というパワーワードに驚く。

 でもそんなわたしに気にする様子もなく、牧原さんはなにかを思い出したように顔をしかめて言葉を紡いだ。



「女子の甲高い笑い声、好きじゃないから」



 そう、彼女ははっきりと口にした。

 牧原栞さんは、自分の感情に嘘をつかない。



「のんびりしたいときとかは聞くとイラッとするし。周りへの配慮してるのかな、って思う。まあそれ以前にわたしが苦手ってだけだけど」



 個人の感想です、と冗談交じりに牧原さんは付け加えた。

 運ばれてきた涼しい風がさらりと頬を撫でる。

 わたしは、ただただ圧倒されていた。


 わたしには、こんなにはっきりと思いを伝えることはできない。どうしても躊躇してしまうからだ。

 わたしとは真逆。しかしそれは尊敬という意味だ。


 牧原さんは、この敵をつくりやすい性格のせいでアンチが多いことは知っている。わたしの友人もたまに言葉を暗くするからそのひとりなのだろう。

 けれど逆に、まっすぐな彼女の性格に惹かれた熱烈なファンも少なからずいる。


 そして今この瞬間、わたしは彼女のファンとなってしまった。



「って、ごめんね由衣ちゃん。いきなり語り出しちゃって」

「いや、全然。……あの、牧原さん」



 牧原さんは不思議そうと「ん?」と首をかしげる。その奥の粟田くんは、相変わらず興味なさげだけれど。

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