第5話

「二組の、牧原まきはらしおりさんと、粟田あわたたくみくん……?」

「そうだけど……もしかして、話したことあった?」

「ううん、初めて」



 そう答えると、牧原さんは「じゃあ、よろしくだね」とにっこりと微笑んだ。

 その隣に、粟田くんも諦めたかのように腰をおろして空をあおぐ。牧原さんが立ち去らないことを察したのだろう。



「えっと、名前……」

「あ、わたしは由衣。由来の〝由〟に、ころも

「おっけー、由衣ちゃんね。ここ、よく来るの?」

「いや……」


 

 来たのは初めてだ。

 ひとりになれそうだったから。〝友情〟とやらを忘れたからったから。

 そんな説明を牧原さんにしたら、きっとドン引きされてしまうだろう。



「初めて。一度、来てみたかったから」

「そうなんだ。わたしはね、結構来る!」



 なぜか自慢するように牧原さんは胸を張る。

 その隣で粟田くんはどこかへ視線を投げてぼんやりとしている。その様子は、多分彼女たちの隣で黙り込むわたしみたいな感じなのだろうか。すごく暇そう。



「なんで、よく来るの?」

「えっとね……休み時間の校舎が嫌いだから」

「――――な、んで?」



 反射的にさっきと同じ言葉で聞き返してしまう。

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