第4話

「匠、座らないの?」

「……普通、話したこともないような女子の横に座らないだろ」

「べつに、先客がいたら黙って立ち去らないといけないなんてルールないし」

「体育館横に来るのは校則っていうルールに違反だけど」



 その女子はわたしに「大丈夫?」とは言ったものの、そこまで気にする様子もなく、男子と軽い調子で言葉をかわしている。


 薄暗いなかでも、その女子の整った、いわゆる〝可愛い〟顔立ちはよくわかった。キラキラと輝く大きな瞳にすっと通った鼻梁、そして小さな顔の輪郭。

 横顔だけでも紛れもなく美少女であるといえる。


 わたしが座っているからか、それとも本当に高身長なのか、隣の男子は身長が高くすらりとして見える。

 癖っ毛なのか、セットしているようには見えないウェーブの髪は少し長めで前髪は目にかかっている。だけれどシャープな顎に形の整った唇と、イケメン……なんじゃないかな。目もとは見えないけれど、纏う雰囲気はどこか気だるげでカッコいい。

 けれど同時に、なんだか聞いた声だな、と首を傾げる。まあ同じ学校に通っているし、聞いたことがあって当然か。


 このふたりはわたしのことなんて知らないようだけれど、有名人のふたりのことをわたしは知っている。

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