罠
第87話
「アンタがノンに吹き込んだ事は忘れてやる。
だからノンから手を引いて欲しい。頼む」
ガクは先輩に頭を下げた。
その誠実さに胸が熱くなる。
「凶暴って聞いてたけど、女のためなら頭下げるんだな」
先輩はそう言って下げたガクの頭をポンポンと叩いた。
「出間先輩!やめて!」
ガクが怒ったらタダじゃ済まない。
「その通りだ。
俺はコイツのためなら幾らでも頭を下げる。
だから、頼む。手を引いてくれ」
ガクは下げた頭を上げない。
「ガク…もういいよ!やめよう!
もう話は終わり。
先輩、もう会う事はありませんから」
そう言ってガクの腕を掴んだ。
「そうはいかないよ。
俺が1人で来てるとでも思ってるのか?」
えっ⁉︎
先輩は右手を高く挙げた。
全身に鳥肌がたった。
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