第32話

疲れたよね、ありがとう。


「おやすみ」


小さな声でそう言って私も眠りについた。



何時間眠っていたんだろう…。


ラブホテルには窓が無くて朝が来たのがわかりにくい。


それでも何か気配を感じてゆっくり目を開けた。


「えっ…」


私の前髪にそっと触れているガク君。


近い!


いつの間にか寝返りをうっていたんだ。


顔が赤くなるのがわかる。


「おはよう、ガク君」


「おはよう。寝れた?」


まだ前髪をくるくる触っている。


「うん、寝れた。ガク君は?」


「俺もグッスリ。


ノン、"ガク"で良いよ。


俺は"くん"ってキャラじゃない。


呼んでみて」


吐息がかかる位の距離。


ドキドキする。


「……ガク」

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