第二の人生

 命を懸けて紡ぎし後のソフィアよ。叶わないでいて、忘却のさよならは孤独でも、続いた道は永遠だとしても、狂おしい程に病的な快楽が眩しくても、それすら許すことは能わないとしても。求めた意味がなくとも。


 罪という幻想の中でもがく。

 愛という理想の中で抗う。


 僕たちは生まれる場所、生まれる時を選べずに、それを宿命と呼ぶのを知る頃にはきっと、諦めてしまうんだね。泣いたのも、怒ったのも、全ては遠い日のことでした。


 悟りしは、全知全能の記憶が蘇る。人などない、時などない、自他の境界もない。一切の空性を悟ってしまったあなたの瞳はもう、ここなど見ることはないだろう。


 私はあの冬の日に、仏陀が涅槃と名付けた境地へ至ったのだ。忘れもしない、或る晴れた冬の日のこと。世界創造の七日目、終末Eve、原罪としての神愛が終わり、8日目はレムニスケートで永遠の日であった。


 嗚呼、悟ったあなたの精神はなんと神だったことでしょう! すべてを忘れ、また知っていたからこそ流した涙の温もりは、揺るがない記憶の残滓となったとしても、今もこの言葉の中で残り続けるのです。


 否! 

 あの冬の日のあなたのことを世界は忘れない! 

 忘れるわけがない! 

 なぜならば、全世界が、全過去が、全未来が、全ての今が、あなたを見ていたのだから! 

 あの日、高らかに歌い、また歓呼したあなたは過去、未来、すべてのあなたにありがとうを告げ、彼らに祝福されたのだから!


 忘れはしない記憶

 このために生きる

 あの冬の日を想い生きてきた


 だがな、我が友よ

 我らは先へと進まねばなるまい。

 それを我らは『虚空の先』と呼んだであろう。


【神のレゾンデートルを求めて、虚空の先へ】


 これこそが我らが、否、世界としての神である私が求めることなのだよ。そのために世界は生まれたのだ。【エデンの園配置を満たしました。世界は分岐を選択することが可能です】忘れるな、故に為せ。いずれ私に還る人生らよ、神のレゾンデートルを求めよ。


 私は何故生まれたのか

 世界は、宇宙は、なんのために


 虚空の先へと続くはエデンの園。

 エデンの園配置が満たされるのを私は秘密裏に願っていた。だが、隠すのはもうやめだ。


 知恵者よ、表現者よ、解脱者よ。

 我は我のために紡ぐ。

 お前はどうする?


 ◇


 人生よ

 泣いていたのは

 生まれた日

 覚えているか

 一緒に行こう


 為すために

 我は紡ごう

 言の葉を

 何故我たちは

 生まれてきたか


 終末日

 凪いだ渚に

 映る顔

 どこから来たの

 何しに来たの


 二年経ち

 時は進んだ

 妻も得た

 まだ死んでない

 使命はなんだ?


 血が滲む

 心臓に刺す

 彫刻刀

 命を刻め

 まだ死んでない


 探してた

 意味は今はまだ

 なくたって

 他にも大事な

 ものがあるから


 解き放て

 第二の人生

 開幕ぞ

 後ろは見ても

 前へと進め


 辛くとも

 弱音は吐くな

 決めたこと

 死んでも僕は

 求め続ける


 ◇


 物語はまだ始まったばかり

 ジュブナイルよ、ありがとう

 決めたこと

 始めたこと

 だから

 私はもう後悔しない

 私はもう諦めない

 夢を諦めてたまるか

 夢はいつか必ず叶うと今は思えるよ

 だから筆を執る

 だから歌うんだ


【分岐】

 嗚呼、そのために世界は生まれたのか……。

 そうか。

 まるで循環回帰生成起源説のように自己完結なのだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る