優しい雪の朝に

第25話

 辺りがまぶしくなり、鳥がさえずり始める。


 朝日が目に差し込み、ユアルーナは目を開けた。


 いつの間にか、朝になっていた。

 どれくらい時間が経ったのか、考えてもはっきりしない。


 窓の外は、雪は透明にきらめいていた。


 花雪はもう消えている。一晩経つと、普通の雪に変わるのだ。


 それでも、美しい雪が地面や木々を白く染めている。冷えた空気が輝いた。


 ユアルーナの心はうそのように軽くなっていた。

 ただ花雪の優しさだけが残っている。暖かい色に染まっていた。


 ユアルーナは窓の外の雪景色を眺めた。

 こんな幸せな気持ちで雪を見たのは久しぶりだった。


 それなのに涙が出た。


 ユアルーナは、鳥の声に混ざって足音が聞こえるのに気づいた。


 雪を踏む足音だ。だんだんヤナの家に近づいてくるようだった。


 やがて、玄関の前で足音は止まる。


 今度は靴の雪を払う靴音がした。やがてドアがノックされた。


「誰だろう」


 思わずユアルーナはつぶやく。

 となりでヤナが息を飲む気配がした。ヤナも期待を込めた、でも不安を消せない目をしていた。


 ユアルーナとヤナは動くことができず、じっと玄関のドアを見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る