第20話

 ヤナは雪ぐまに隠れたまま、後ろのほうに歩いて、くまを元の位置にもどす。


 そのままテーブルの影で姿を隠したまま、となりの部屋に移動する。


 なにもなかった目をして、ドアから顔を出した。


「さあ、眠る時間だ」


 ヤナは部屋の灯りを消す。雪至の夜は、どの家も早めに消灯する決まりだからだ。


「お前らも、もう眠る時間でちゅよー」


 ヤナは作りかけのぬいぐるみを、ペット用の座布団の上に乗せた。


「離れるけど、淋しくありましぇんからねー」

 ぬいぐるみたちの頭を撫でて回る。


 お前らにも花雪の癒やしがありますように、と祈ると、ベットに入った。


 ユアルーナは、ヤナの入れてくれたお茶を枕元に置き、ベッドに入った。


 ふかふかの毛布はとても温かい。


 ……だいじょうぶ。雪の精霊は優しいよ。


 ヤナが闇の中、ささやく。


 悲しみも恨みも全て埋め尽くして、消してくれるよ。いまからやって来る春のために。


 花雪はユアルーナも護ってくれるよ。今年はきっと、罪を許してくれるよ。


 ターシアスだって、ユアルーナから離れるはずないよ。


 ヤナの声を聞きながら、ユアルーナは目を閉じた。

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