花雪が降る雪至の夜

第17話

 しんしん、しんしんと花雪が降る。


 精霊からの贈り物の花雪は、本当に花の形をしている。桜の花に似た、小さな花だ。


 地面に落ちて、白い花野原を作る。木々の枝にとまれば、木に真っ白な花を咲かせる。


 まるで春のように、花であふれていた。


 雪至の夜は、誰も家の外には出ない。出れば、花雪を壊してしまうからだ。


 村中が優しく静まり返っている。誰にも汚されずに降りつもる雪は、本当に美しかった。


 他の国から見ると、花雪は本当におとぎの国の現象だそうだ。雪を見ていると、ユアルーナもそんな気がしてくる。


 この国は現実ではないおとぎの国。

 降るのは、おとぎの国の雪。


 花雪はもうすっかり、辺りを埋めつくしていた、見渡す限りの冷たく美しい花野原だった。

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