第15話

 村の広場がざわめいていた。


 一人の少年が、村の人間に囲まれている。


「おかえり」

「よく無事で帰ってきたねー」


「こんなに、大人びて……!」


 かすかな声が届いてくる。


 三年振りに見るターシアスだった。本当に、随分大人びていた。

 彼が持つ、誰よりも美しい金の髪も背中まで伸びている。

 髪の向こうの瞳は、穏やかな笑顔をつくっていた。スケッチブックを取りだし、村のみんなに見せてまわる。


 子供たちが歓声をあげた。


 なつかしさとともに、涙が込みあげる


 外に出たユアルーナは、脚を止めた。

 

 ドアの音に気づき、ターシアスがユアルーナを見たからだ。熱のこもった、でも泣きそうな目だった。


 どきどきした。ユアルーナは動けなくなった。


 ずっと動かずにいたターシアスは、やがて微笑む。

 ユアルーナのほうに足を踏み出した。


 そのターシアスの腕を村長が止めた。

 乱暴な村長の手つきに、ターシアスは驚いて振りかえる。

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