第5話

 ユアルーナは目を閉じる。


 まぶたの裏にあの人、……ターシアスの姿が浮かんだ。白い霧のような物に包まれて、彼は優しく微笑んでいる。


 愛おしくて愛おしくて、胸がしめつけられた。


 ターシアスは、ヤナやアミナと同じ、ユアルーナの幼なじみだ。


 ユアルーナたちより三つ年上で、今年二十歳。


 一人だけ年上なこともあって、ユアルーナたちの兄のような存在だった。いつもみんなをまとめて、面倒を見てくれた。彼はユアルーナたちにとってヒーローだった。


 ユアルーナたちがいつも一緒に遊んだのも、ターシアスがいてくれたからかもしれない。


 年上な分、いろんなことを知っていて頼りになる。当然、内面も一番に大人になっていく。


 ユアルーナの憧れで、いつも彼の背中を追いかけていた。


 ターシアスはもうずっと、この村を離れている。

 だからアミナが亡くなったことも知らない。


 知ったら驚くだろう。


 悲しむだろう……。


 そのときのことを想像すると、胸が苦しくなる。

 優しいターシアスに傷ついては欲しくなかった。

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