第4話

 花雪が降るのは一年に一度の、雪至の夜だ。雪至とは、雪が一番深くなる日のことだ。


 雪の妖精たちが、共に生きるわたしたちに安らぎをくれる日。


 雪至の日に降る花雪は、みんなの悲しみや苦しみを埋めてくれる。


 しんしん、しんしん降り積もって、心の悲しみを埋め尽くし、消してくれる。


 だが、罪への安らぎは与えてくれない。


 だから、去年の雪至でも、雪の精霊たちはユアルーナの悲しみを消してくれなかった。

 村の人たちのユアルーナに対する憎しみも、消してもらえなかった。


 一年間、ユアルーナたちは悲しみと憎しみを抱えたまま暮らした。


 ……あの人はどうだろう。


 わたしのとっても大事な、大好きなあの人。


 あの人もやっぱり、わたしへの憎しみを消してもらえないのだろうか。

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