第2話

「なあ、この子見てみろよ」


 ヤナは抱えている雪うさぎのぬいぐるみを指差した。


「すごいだろ? いいだろ? 今度も傑作だぞ」


 いいながら、ヤナはまた針を動かし続ける。趣味のぬいぐるみ作りに興じていた。


 糸がなくなりかけていることに気づいたユアルーナは、新しい糸を渡す。


 ついでに床の糸くずを拾った。


「あー、かわいい。かわいいでちゅね。最高だぞ。お前ら」


 雪うさぎや雪ぐま。ヤナがつくったぬいぐるみで、彼の仕事場は埋め尽くされている。


 ヤナやユアルーナの居場所がなくなるほどだ。


 みな、この白雪の国の人気の動物だ。

 雪羊の毛を使ったふわふわのぬいぐるみは人気で、とても高く売れる。


 こんな雪深い村に、王都から注文も来る。


 ヤナは手芸にしか興味がない少年だ。

 大好きな動物を模した大好きなぬいぐるみ作りを、毎日毎日繰り返している。


 村一番の変わり者だ。


 恋にも無関心だ。だが、そのおかげで、ユアルーナとの友情はずっと続いている。


 ユアルーナはわるくないよ、と、ヤナは針を動かしながらつぶやいた。


「ユアルーナはわるくない。だって、友達を励ましただけだろ? 王様だって、罰は与えないって」


「ありがとう。ヤナ」


 でも、やっぱり罪は罪なのかもしれない。

 だって……。


 ユアルーナは目を閉じて、また花雪を想った。

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