第13話
地図もレーダーも長嶺のサポートもない。
ただ直感に従って走る。気配のする方をひたすら目指す。核兵器の格納庫だというから至るとこに兵器が転がっているのかと思ったが民間の工場のような呑気な景観だった。逆に言えば隠れられる影がいくつもあるということ。
「……」
足が見える。革ブーツに赤い紋章。枯柴の手下だ。背後から近づく。ショットガンを振り上げる。案外あっけなく崩れ落ちる。体に触っても目ぼしい物は見つかりそうにない。
先へ進む。ちらほらと人の数が増えてきて装備も重たくなってくる。全員ぶっ殺してやる。
右の方で怪しい音がする。何かを掻き回すような粘り気のある粘膜を擦るような音が。
枯柴の部下たちは即座にライフルを構え、音の方へ近づく。微かに女の喘ぎ声も聞こえる。
音はミサイル専用のエアステアの奥で聞こえる。エアステアの後ろへ銃口を向ける。
誰もいない?
AKライフルが火を吹く。浜辺は五秒とたたない内に四人を狙い撃ちにした。反撃が降る。
天井と接している防火タンクは良い盾になっている。ぬるぬるする手榴弾のピンを抜いて後方へ投げる。防火タンク越しに轟音が聞こえ、視界の両端に爆炎が映る。
正直にいう。かなり楽しい。
爆風が収まってからタンクから飛び降りて奥を目指す。人の話し声がする。爆発に気付いて焦っているようだ。声の主はおそらく枯柴とその一味。安心しろ、急がなくても地獄への特急列車はまだ出発しない。
ショットガンに持ち変える。スーツの後ろが赤く染まり、両手足が蝋人形のように翻る。その場にいる全員が慌てふためいて逃げ出そうとする。女が三人、男が四人。特に高級なスーツを身に纏った男がいる。あれがおそらく枯柴。余裕綽々で、椅子から立とうともしない。体格も特徴も一致する。奴は最後だ。
女が脇から逃げようとする。すかさず左手のベレッタで撃ち抜く。銃を抜こうとする男を三人、蜂の巣にして女を殴る。全員、人を殺したこともないようなど素人だった。
残りの女が両手を上げながら命乞いする。
「おぉ、お願い助けて!」
ライフルで名誉の死を与える。ライフルを後ろへ捨てる。ウエストからベレッタを抜き突きつける。
「枯柴朋邦! 両手を見せてこちらへ向き直れ」
枯柴はゆっくりと、あくまでこちらに反抗するような態度で振り向いた。
「……あなた……」一瞬グリップを握る手が緩む。
「会沢本部長……?」
枯柴かと思っていたその男はまさかの会沢だった。現場から消えていたのはそういうことだったのか……
「なぜ……」
「浜辺代理人、優秀な君なら容易に辿り着くと思っていたよ」
「ひ、膝をついて腹這いになれ」
「悪いが私にも役割という物がある」
「どうしてあなたが枯柴の手下なの、内通者とはあなたのことだったのね」
笑みをこぼす。
「それで? 君はどうする。最初から怪しかったなどとお決まりの文句をぶつけるか?」
「かかしを差し向けたのもあなたね」
「おぉいおい、悪いことしたみたいにいわないでくれよ、私はただ自分が正しいと思うことをしているだけだ」
ポケットからスイッチのような物を取り出す。恐らくそれが核のスイッチ。
「狂ってる……」
即座に右肩と両足を二発ずつ撃つ。
「うぅ、がっ」
短くうめいてその場に崩れ落ちる。
近寄ってポケットから結束バンドを取り出す。会沢が落としたスイッチを拾い上げて隔離する。会沢のスーツのポケットから無線のような物が見つかった。刻印からして結社団のものだ。スイッチを押す。
「みんな聞いて、奴らの基地を制圧した」
後ろでチームの動揺する声が聞こえる。
「枯柴はすでに逃亡していましたが仲間と黒幕を捕まえました。会沢孝之本部長です。至急部隊を寄越してください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます