第38話

「遅いぞ!チェスター。

じゃあ、森に――」

「わりぃな、クレス。

今日はダメなんだ」

「えぇ~っ!?」


幼いチェスターがドアを開けると、俺とは対称的な大きな目を持つ少年。それがクレスだ。

誘いを断ると、頬を膨らましムクれるクレス。


「今、アミィにマーボーカレーの作り方を教えてるんだからよ」

「えっ!

マーボーカレー?!」


クレスには一度、それを食べさせたことがある。

その時は口から火が出そうな顔を見せていたが、食べきった後は『おいしかった!』とか言っていた。

そんな思い出があってか、


「なぁ、チェスター。

作ってるトコ、僕も見ていいかな?」


興味を示し、チェスターの横を押し入ろうとした。


「おっと!

たとえクレスでも、それはダメだ!」


「なんでだよ~?」

「ウチのマーボーカレーは特別なんだよ。

バークライト家の一員にならないと作ってる様子は見せられねぇんだ」


そう言うと、ちぇ、と唇を尖らせるクレスに、もう一度「わりぃな」と言った。

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