第35話

チェスターは手を振って見送ったが、二人の姿が見えなくなった途端に手を下ろし、小さくため息をついた。


「何が…足らねぇんだろうな…」


天を仰ぎながら、チェスターはつぶやいた。


夜空に輝く満天の星。辺りはフクロウが鳴いているくらいで静かだった。


トーティス村はもともと夜は静かだ。


けど


違うんだ。


足りないんだ。


ダオスがいなくなった世界に、以前と同じようなこの村に…


アミィはいないんだ。


訊いてみたくても、アミィは…。


体の奥から、込み上げてくる“怒り”。


ひゅう、と冷たい風があたり、チェスターは我に返った。


「…っと」


ひとりになると、そればかり考えちまうんだよな。


「…中に戻るか」


頭の後ろを掻きながら、チェスターは家のなかに入りドアを閉めた。

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