第30話

「でも、何で別のものを作らなかったんだい?」


ふと疑問に思い、クレスが訊いてみると、チェスターは渋るように頭を掻いて


「…俺はただ…もしここで、別なものを作っちまうと、すずちゃんだけ俺たちとごはんが違くなる。

それはいやだな。

…そう思ってよ」


「…!

あり…」


チェスターさん…。


その心遣いが嬉しくて胸がいっぱいになりました。


『ありがとうございます』


今までの私だったら、この言葉を感情を消していたらすぐにでも言えました。


けれど、それではいけない。

その気持ちを受け流してしまうようで。


「よぉ~し、そんじゃあゴハンの準備するぜ!」


「お皿用意しますね」


私が口籠もっていると、タイミングをはかったようにわざとらしく、鼻をフンフンと鳴らしながらキッチンに入ってきたアーチェ。その後ろにミント。


「お…おまえら…」


今の話を聞かれたと思い、チェスターの顔がみるみる赤くなっていった。

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