第29話

ゴクリ


「……」

「…すずちゃん?」


空になった皿をみたまま黙っているすずを、心配して顔を覗き込んだクレス。


「……カレーは辛いとばかり思っていました。

けれど、これは違います。

少し辛いけれど、この甘い香りは…」


顔を上げ、チェスターを見たすず。


「チェスターさん。

先程入れていたものは『はちみつ』ですね?」


チェスターは『ああ』とうなずいて、


「なぁ。

味は、どうだ?」


「…大丈夫でした。

これなら、私も…」


「だろ?」


不思議でした。

苦手だったカレーが食べられたなんて…。


「チェスター、すごいなあ…」


素で関心するクレスに、チェスターは大げさにため息をついて呆れた。


「…ったく。

もとはといえばおまえがカレーを作んなきゃ、こんな事にはなんなかったんだよ」


「ご、ごめん」

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