第6話

「チェスター!」


チェスターが突然足を止めたのは、彼の前にクレスが立ちふさがったからだった。


「なんだよ、クレス。

…どけよ」


「せっかく作ってくれたんじゃないか。

外には行かせないぞ、チェスター!」


どちらも譲るつもりもない。二人はにらみあう。仲間も二人の様子を見守るだけ。


「…の割りにはクレス。おまえの声、震えてるぜ?

ホントは―…」


チェスターが諦めたのか、ふっと釣り上がった眉を緩め、悪戯っぽい顔を見せる(アタシには見えてないけど)。


「そっ…」


「オイ、アーチェ」


クレスの答えを聞かず、チェスターは向きを変えた。


「な、何よ?」


こちらに向けた顔は、いつものやっぱりムカツク顔。


「マズかったら承知しねえぞ!」


言いながら、部屋にズカズカ入り手近な椅子に座った。


周囲はホーっと息をついた。もちろんアーチェも。


とりあえず良かった。と。

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