第54話
「クラトスと話をしたい一心で、他のことを怠けて。
みんなの――ゼロスのことも」
ロイドは振り返らず、ただうつむいて水面に映る自分の今の顔を見ていた。
「…まったくだぜ」
ゼロスの声が低い時は、本気の証拠。
怒るのは当然だ。
「…でも……」
「ゼロス?」
自分の背中が感じ取っていた空気が少し緩んだ気がして、ロイドは振り返る。
「でも、ま~。
こんなトコまで助けに来てくれたしなぁ~」
不器用な照れた顔を見せていたゼロス。この顔もまた、本当だ。
「許してやってもいいぜぇ」
「ゼロス…っ」
“ありがとう”
そう言おうとして叶わなかった。
「おら、ロイド!
いつまでこん中に入ってる気だよ!」
突然、右胸の上を強くドンっと押されて、思わずロイドは咳き込んだ。
ああ、そうだっけ。
俺たちはまだ、水の中にいたままだった。
「早くしね~と、寒さで上がれなくなっちまうぜぇ」
「ああ、そうだな」
両腕を交差させて自分の肩から二の腕をしきりにさすっているゼロスの姿を見て、ロイドの顔はほころんでいた。
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