第55話

ロイドが先行して泳ぎ、陸の縁に手をかけた。もう片方の手も陸に手をついて勢いよくザバっと水の中から抜け出した。


服が水を含んで重い。


夢にしてはリアルだよな。


水が入ってタプタプになった靴と手袋を外し、服を絞りながらロイドは思っていた。


ちゃぷ


「ん?

おい、何でゼロスは上がらないんだよ?」


水の音で我に返り、振り向くと陸に上がる気配のないゼロスの姿があった。


「ん、まぁ~。

俺さまはいいのよ」


「何言ってるんだよ!いいワケないだろ!」


「いいって言ってんだろ!」


「!?

ゼ…ゼロス…?」


突然、ゼロスの鋭い声が飛んできて、ロイドは一歩後退りをした。


「悪いな。

俺は、ここからは出る事はできないんだ」


「なん…だって?」


夢なのに悪い冗談だ。


気休めだろうけど、夢の中でゼロスを助けられれば…。


そう思っていたのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

MINNATO かねこかずき @kaneko507

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る