第53話

「お前…!」


ゼロスが見せた顔は、救いの塔での出来事が関係しているからだなとロイドは思ったが、今は黒い底に飲まれないことが先だった。


「文句は後で聞く!

今は早くここから出るぞ!」


ロイドはゼロスの腕をつかみ、光の射す方向へと器用に泳いだ。





水面に、こぽこぽと気泡が現れる。


「…ぷは!」


その場所から勢い良く飛び出したロイド。彼の後ろから控えめに現れたゼロス。


「……」


眉間にしわを寄せたまま、黙ってロイドの事を見ていた。


「お!

あそこから上がれそうだな。行こうぜ、ゼロス」


そんなゼロスの様子には気づかずに、ロイドは彼の腕をつかんだまま再び泳ぎだした。


だが、それを拒むように動いてくれないゼロスに気づいて、ロイドは泳ぐのをやめた。


そうだよな。うん。


「…ゼロス…ごめん…」


ゼロスがずっと俺に向けていた視線には気づいてはいたんだ。


怒っているような。


恨んでいるような。

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