第9話

そいつは赤毛の男。


「こいつが、内通者か?」


「……。

私は報告を持ってきただけだ。これで失礼する」


答えず、クラトスに背を向け羽根を出し飛び去っていくユアン。


「…当たりだな」

小さくなっていくユアンを見つめながら、つぶやいた。


気づけば雪は一時的に止み、雲が去り、星が顔を出した。


星か…。


「クラトス!?

なんでここにいるんだ?」


背後から、私の名を呼ぶ声が聞こえた。


封筒を隠し振り返えると、それは久しぶりに間近で見るロイドの姿。


「…星を見ていた」


ここで見る必要があるのか?と怪訝な顔をされた。


「…それよりロイド。

仲間に心を許しすぎるな。

…おまえの近くで悪意を持つ者が牙を剥いているかも知れんぞ」


とは言ってみたが、ロイドは仲間を疑って接するタイプではない。


…仕方ない。

私がロイドをあの男から守らねば!


「さらばだ」

「お、おい。クラトス!?」


ロイドとの時間に浸らず、クラトスは羽根を広げ飛び立つ。


また降りだした雪の中、新たな決意を胸に大陸を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る