第38話

05.イタズラ



ガサガサガサ


「…いっ!

ロウエン!待ってくれよ」


俺達は今、山岳地帯にいる。


『ここから違う匂いがする』と、草や枝を掻き分けて狼獣人のロウエンは、一人で進んでいってしまう。

それを普通の人間である俺が追いかけるのだが、肌が見えている部分に枝や草の葉先が刺さり、進むのをためらわせた。


ロウエンは狼獣人だから…いや、そんなことないよな。


キリヤは無理をやめ、ゆっくり追うことにした。





「見ろ、キリヤ!」


ようやく抜け出すと、ロウエンの声の調子が高かった。

彼の手には、細工の施された箱があった。


「これが、海賊の宝だ」


「これが…!」


この地帯はよく来てたけど、まさかこんなところに宝箱があるなんて。


「…もっとわかりやすいところに、あればいいのに」


「何言ってんだ。

これだからおもしろいんだろう?」


「…うーん?」


小さい頃なら、宝探しとかは結構好きだったけど、今はわからないや。

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