第36話

03.勘違い



『キリヤ…どこにいるのよ』


いつも前向きで、泣き言を言わなかった彼女が、人目につかない岩影で見せた弱い一面。


『キリヤが居たって本当?』


オイラが異界の建物で出会った少年のことを彼女に話すと、普段オイラ達に見せている以上の笑顔を見せた。


「…てっきり、そうだと思ったんだけどなぁ…」


「ふぉふぉふぉ。

ダグはまだ甘いのぅ」


頭には金に輝く冠。

口がどこにあるかよくわからない、長くたくわえた白い髭。この村一番の物知りの長老は笑いながら言った。


「ヒトの心とは難しいものじゃ」


「ほらっ!キリヤっ

いつまでもボーっとしない!」


「いて!

シーナ、何も叩くことないだろっ!」


ダグの視線の先には、彼の頭を叩いたシーナと呼ばれた少女と、彼女に叩かれつつも後をついていくキリヤの姿があった。


「…仲がいいのは確かじゃがの」


「…うん。」


尻に敷かれてるけど。

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