第35話

02.緩やかな日常



こんな風に思ってしまうのは不謹慎ですけれど…。


金色の長い髪。後ろの髪はウェーブが掛かっていて先を青いリボンで止めている女性は、座り慣れていないふんわりとしたソファに腰を掛けた。


隣にはまだ幼い顔立ちの少年も座っている。


……落ち着く。


普段女性は、細工の施された石造りの椅子で、もっと硬く冷たい椅子に座っている。


今でも、民を守ることに変わりはないけれど…、

ここはゆっくりと息がつける。


「姉さん…」


しばらく目を閉じていると、視線を感じて目を開いた。


隣に座っていた少年が顔を覗き込んでいたのだ。


「どうしたの、カリス?」


「城での凛々しい姉さんもいいけど、今の姉さんのほうが綺麗だ」


顔が熱くなるのを感じて、女性は横にあったクッションで顔を隠した。


「もう、カリスったら…」


正面切って言うのをためらってしまう言葉を、カリスは簡単に口にしてしまう。


でも。


「ふふふっ」


以前では得られなかったものが、今はあった。


カリスの元気そうな笑顔。


そして、等身大のわたくしが。

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