第20話
08.心の闇
☆
「マオは、な…」
「え…?
どうしたんですか、団長?」
走り回っている、クノイチの衣裳を纏った半獣人の少女。
シオンの隣で腕を組んで立っていた狼姿の獣人・ヴォルグ。精鋭部隊の団長だ。
が、ぽつりと言ったのだ。
「今ではあんなに明るいが、ここに来た頃は人間からも、獣人からも疎まれてたんだよ」
「…どうしてですか?」
「と、そうだな。
お前には記憶がないから、わからないか。
ヒトはだな、人間でも獣人でもない奴が気持ち悪いんだ」
シオンはマオを見た。それに気づいて『おーい』と彼女は手を振った。
…そんなことがあったなんて、微塵も感じさせない。
「…団長も?」
「オレはそうは思わねえ」
シオンの問いに、ヴォルグは首を振り遠くを見るように、空を仰いだ。
何があったかはわからない。立ち入ってはいけない気がして、それ以上は訊かなかった。
…ヒトは誰しも…
心のなかに闇を抱えているんだな。
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