第20話

08.心の闇



「マオは、な…」

「え…?

どうしたんですか、団長?」


走り回っている、クノイチの衣裳を纏った半獣人の少女。

シオンの隣で腕を組んで立っていた狼姿の獣人・ヴォルグ。精鋭部隊の団長だ。


が、ぽつりと言ったのだ。


「今ではあんなに明るいが、ここに来た頃は人間からも、獣人からも疎まれてたんだよ」


「…どうしてですか?」


「と、そうだな。

お前には記憶がないから、わからないか。

ヒトはだな、人間でも獣人でもない奴が気持ち悪いんだ」


シオンはマオを見た。それに気づいて『おーい』と彼女は手を振った。


…そんなことがあったなんて、微塵も感じさせない。


「…団長も?」


「オレはそうは思わねえ」


シオンの問いに、ヴォルグは首を振り遠くを見るように、空を仰いだ。


何があったかはわからない。立ち入ってはいけない気がして、それ以上は訊かなかった。


…ヒトは誰しも…


心のなかに闇を抱えているんだな。

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