第15話

03.十字架と血



人目につかないように、まだ陽が昇る前の暗い道を男が歩いていた。


……オレはいずれ、父上の跡を継ぐだろう。


男は振り返り、出てきた城を見、国を見た。


銀色の髪を持つ男。片手には荷袋。利き手には一振りの長い刃物。


男は黙って出ていってしまっのを今になって少しだけ後悔していたのだ。


……父上。

……アイラ。

……ガラハッド。

従者や、武将の顔が浮かんで来る。


……だが、決めたんだ。


オレはいずれ父上の跡を継いで、王になるだろう。

だが、ふんぞり返って権力ばかり掲げている王にはなりたくないんだ。


男は向き直り、これから向かう道に目を向けた。


オレはもっと、もっと強くならなくちゃいけない。


力だけじゃなく、心も強くして…


オレは帰って来る。


男は歩き出した。

これから向かう道に目を向けると、朝日が顔を見せた。


それは、未来を示しているような気がして、踏み込む足にも力がこもった。

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