第16話
04.天秤
☆
天秤の片側が重くなっていくのを、少女は感じ取っていた。
それは負のエネルギー。
憎悪、嫉妬、恐怖。
それらの感情が蓄まっていくのを。
(……いけない)
正座していたが中断し、少女は立ち上がった。巫女の道具である『カドゥケウスの杖』を持って。
「!」
途端、神殿の外から何かが来るのを感じた。
と、同時に。
「リュウナ!」
少女のもとに駆け寄った男は、緑の鱗、頭には枝のように分かれた角が左右に。まるで竜のような大柄な人物だった。
「敵、来る!
リュウナ、逃げろ!」
「ラザラス!…けれど」
片言で叫んだ彼の意志は強かった。少女は言いかけた言葉を飲み込んで、
「…ラザラス。
私は助けを呼んできます。だから、それまで保ちこたえてください」
その場を彼に任せて、リュウナは裏口へと走った。険しい山道をひたすら走り、城塞都市国家シルディアを目指した。
(負のエネルギーを打ち負かすことができる人を――)
いてほしい。と、そう祈りながら。
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