第16話

04.天秤



天秤の片側が重くなっていくのを、少女は感じ取っていた。


それは負のエネルギー。


憎悪、嫉妬、恐怖。


それらの感情が蓄まっていくのを。


(……いけない)


正座していたが中断し、少女は立ち上がった。巫女の道具である『カドゥケウスの杖』を持って。


「!」


途端、神殿の外から何かが来るのを感じた。


と、同時に。


「リュウナ!」


少女のもとに駆け寄った男は、緑の鱗、頭には枝のように分かれた角が左右に。まるで竜のような大柄な人物だった。


「敵、来る!

リュウナ、逃げろ!」


「ラザラス!…けれど」


片言で叫んだ彼の意志は強かった。少女は言いかけた言葉を飲み込んで、


「…ラザラス。

私は助けを呼んできます。だから、それまで保ちこたえてください」


その場を彼に任せて、リュウナは裏口へと走った。険しい山道をひたすら走り、城塞都市国家シルディアを目指した。


(負のエネルギーを打ち負かすことができる人を――)


いてほしい。と、そう祈りながら。

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