第6話

05「少しね。悔しい」



「姉さん、まだ起きてたの?」


夜中、寒気を感じてボクは起きたんだ。


時計は2時を指していた。


キィとドアを開けると、姉さんと呼ばれた女性は音に気がつき、振り返って微笑んだ。


「ええ、資料をまとめていたの」


そう言うと、ふぅとため息をつく。


疲れたのかな?


「…姉さん?」


「大丈夫よ。

ただ…少しね。悔しいのよ」


「…悔しい?」


ボクは首を傾げながら訊くと、


「私に主導権があったら…ってそう思う事があるのよ」


「どうしてさ?」


すると、資料といっていた本を見せてくれた。


「ロイドったら、モンスター図鑑を完成させる気ないんだもの」


と言ってページを開いて見せる。…確かに余白が多い。


姉さんの本を持つ手はプルプルと震えている。

元々つり上がっている目がさらにキツくなる。


「私に……っ!私に主導権があれば、森の隅々、建物の陰…モンスターを捜し出してみせるのに!!」


ヤバっ!遺跡モードの姉さんだ!!


「お!おやすみっ」


危機を感じてボクは、夜中だというのを忘れて、バタバタと逃げ出した。

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