第83話

私は顔をひくりと引きつらせて


「そうはならないと思うけど?」


言ってみた。


万亀はにこっと笑うだけだ。


しかもそれで話はまとまったみたいになってしまってる。


私は『あのね、』と声を出そうとしたん──だけど。


その『あ』の文字を口にしようとした、丁度のタイミングで、車がゆっくりと止まる。


ハッと気づいて外の景色を見ると、もう、私の家の前、だった。


車の戸が、猪熊さんの手によって開けられた。


「着いたみたいだ」


にこっと、万亀が微笑む。


だけどその微笑みは何だかちょっと『悪い笑み』って感じだった。


このタイミングをわざと計って・・・・・・いて……そしてまんまと成功したっていう様な。


いや……さすがに考えすぎかもしれないけど。


私がそれ以上に何か言葉を継ぐ前に──。


「それじゃあ契約成立って事で。

今日から三ヶ月、よろしくね、瑠衣さん」


にこりと爽やかに笑った顔はそのままに──万亀は簡単に、そんな事を言ってのけたのだった──。

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