第81話

責める訳でも悲しげな訳でもない、ごくごく普通の世間話でもするような調子で、万亀が言う。


『明日の天気は晴れなんだっけ?』って問いかけるのとほとんどおんなじくらいの調子だ。


私はだけど、それにぎくりとしながらも万亀の方にぎこちなく顔を向けて、そのままにっこり笑ってみせる。


「う、うん、まぁ」


にこにこ〜っと渾身の笑みで答えた私に、万亀もにっこり微笑んで、


「嘘だね」


と、何故か何の躊躇いもなくズバッと一刀両断に嘘を見破ってきた。


私がピキリと凍りつく中万亀は言う。


「まぁ成り行きは何となく察しがつくよ。

そうでも言わないと『面倒くさい』って思ったんでしょ」


何に対して、面倒くさいと思ったか、とは言わないけど。


この口利き……たぶん万亀には全部・・・バレてる。


私は思わず困り顔をしてみせた。


万亀がにっこり笑顔のまま、窓の縁に器用に腕をついたままでそれに返した。


そーして……私が思いもかけなかった事を口にする。


「きっとこの事がバレたら、また面倒くさい事になるね?」


言ってくる。


にっこり笑顔。


柔らかな口調。


だけど。

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