第80話
◆◆◆◆◆
車の中に、し〜んとした沈黙が流れる。
猪熊さんは『私はここにおりません』とばかりに運転に集中して存在感を消してるし、私も同じだ。
空気にでもなった様に大人し〜く、存在感を消そうと徹してた……けど。
左側からの──万亀からのじっとした視線を感じてもいた。
万亀は窓の縁に器用に腕をつき、頭を手で支えながらこっちを見ている。
その姿を目の端に捉えつつ……私はたらりと一つ汗を垂らしながら、密かに身を縮こめていた。
だって……だってよ?
どう考えたって気まず過ぎでしょ、この状況。
万亀は直接言ってはこなかったけど、絶対に私が猪熊さん狙いなんだっていう大嘘話をみんなから聞いてる。
そりゃ、(猪熊さんには悪いけど)嘘は嘘のまま突き通しておけばいいんだし、万亀なんか関係ないって言えば関係ないんだけど……。
でも……。
〜この沈黙……なんか耐えられない……。
と──ずっとじっと私を見ていた万亀がそっと口を開く。
「もう気づいてると思うけど。
学校での噂話、聞いたよ。
瑠衣さん、うちの猪熊が好きなんだって?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます