第68話

私はその姿を見ながら──よーやく我に返って、


「〜は?」


山野葵へ素っ頓狂な声を上げる。


今一体、どーゆー流れでそんな話になったのよ?


全く意味が分からない。


けど、私の周りをがっちり取り囲む女子たちは誰もそんな風には思わなかったらしい。


どころかみんな揃って私からのなんらかの答えを期待して待ってさえいるらしかった。


私は……う〜むと心の中で唸りながら考えて──そーしてまぁ妥当だと思われる答えを用意する。


「まぁ、人の好みはそれぞれだからなんとも言わないけど。

山野さんがあいつを好きだって言うんなら協力くらいするわよ?」


すっとぼけたフリで、言ってみる。


もちろん私だって、山野葵が冬馬を好きだなんて全然これっぽっちも思ってはない。


これはきっと、何かの本筋に繋げるためのただの布石・・なんだ。


案の定──山野葵は冬馬の事なんか全く眼中にもないってばかりに、


「もぉ〜、ヤダ〜、有馬さんったら冗談上手いんだから〜」


なんて言いながらベシッと私の背中を叩いた。


そうしながら、ようやく本題を口にする。


「違う違う。

私がくっつけたいのはね──尾瀬と、有馬さんなの!」

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