第59話

言うと、


「俺は全然構わないよ?」


万亀が素っ頓狂な返事をしてくる。


あ・の・ねぇ……。


私が・・構うのよ。


そう言いたかったけど、ひとまず飲み込む。


万亀が言った事も無視だ。


「……と、いう訳で。

せっかくここまで来てもらったけど、私は万亀あんたと一緒に登校はしません。

ごめんね」


言って、そのまま一人進んで行く。


……まぁ、行き先は同じだから万亀にはちょっと遅れて行ってもらう事になるけど。


正直(向こうが勝手にした事だけど……)ここまで来てもらって、しかも私が家から出てくんのも待ってもらってて、申し訳ないって気持ちもあるんだけどね……。


万亀は、とりあえずはついてきてない。


ただぽつねんとその場に立っているみたい。


その姿を、私は振り返って見た訳じゃないけど……。


けど……。


どうにもこうにも気になって、ちらっと後ろを振り返った。


万亀は、しょんぼりと悲しげにその場に立ち尽くしたままだった。


まるで飼い主から見捨てられた子犬みたいな目でこっちを見ている。

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