第58話

そう言いたかったけど、話の通じないSPの人の左側がチャッと黒いスマホを取り出して「至急救護班の用意を……」とか言い出しかけたのが聞こえたので、私は慌てて


「ううん!すっごい元気!

元気すぎて困っちゃうくらい!」


パッと額から手を離し、元気一杯に答えて万亀とその後ろのSP二人へ元気度をアピールする。


SP左側(そう名付ける!)がそれを聞いて「いや、問題なかったようだ」と電話を切る。


私は心の中で ふぅ〜と大きな息をついた。


まったく、ちょっと額を押さえたくらいでどんだけの大事にしようとしてんのよ。


っていうか救護班ってなに?


あんた、家に救護班なんてもんがある訳?


突っ込みに突っ込みを重ね思いつつも、私はに〜っこり笑顔で万亀に対応する事にした。


「ところで、あのね。

すっご〜く言いにくいんだけど、私、あんまり目立つのって好きじゃないのよね。

ほら、こう言っちゃなんだけど、後ろのSPの人達ついてるとものすごく目立ってる。

こんなんで学校まで行ってたらその間に私の心が折れるわよ。

それに、こんな風に揃って登校したら ま〜た『ほんとは付き合ってんじゃないの』とかなんとか変な勘ぐりをする人もいると思うし」

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