第60話
立派なSP二人と、猪熊さんは何事もなかった様にさり気なく私からも万亀からも目線を逸らしている。
ご近所の人達の視線がちくちくした。
万亀のぽつねんとした悲しげな立ち姿がものすごい同情を誘ってくる。
ここでそんな言葉を、情け(?)をかけちゃいけないっていうのは私にもよ〜く分かってる。
万亀がいくら悲しげだろうが、恥をかかせることになろうが、ここは捨て置いて行かなきゃいけないって事も。
だけど……。
こんな状況で、そんな事出来る?
私は はぁっと一つ息をついて、仕方なく万亀の所まで数歩戻って、言う。
「〜分かった。
今日だけ……。
今日だけは学校の近くの角、二つ前の所まで一緒に行きましょ。
だけど明らかに人目を引き過ぎるようならもっと手前で私だけ先に行かせてもらうから。
あと、これからは例えこうやって私の家まで来て待っててもらってても絶対無視するからね。
分かった?」
言うと──万亀がパァッと顔を輝かせる。
「〜うん、分かった」
そう、にっこり笑って言うのに、こちらの様子を見ていた近所のおばさま方が「きゃあっ」と乙女らしい黄色い声を上げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます