3.山野 葵の作戦

第56話

次の日の朝──


私はふふふ〜んと気分良く学校へ行く支度を整えていた。


昨日、猪熊さんによぉ〜くお願いしておいたから、今日はもうリムジンはうちには来ない。


お父さんもお母さんもやたらに惜しがってたけど、私は「これでいいのよ」と一蹴した。


昨日のリムジンは、不良グループから万亀を救ったお礼みたいなもんでしょう?


特別な体験をさせてもらった事に間違いないんだから、それで貸し借りはチャラ。


それ以上にあれこれしてもらうっていうのはちょっと違う気がするのよね。


まぁ学校に行けば万亀と会うし、万亀がどういう反応をしてくるかは分からないけど、今日はとりあえず気楽に登校出来るわ。


いつもと同じ時間に支度を終えて、朝食を食べて家を出る。


爽やか〜な朝の空気がたまらなく気持ちいい……と思いつつ歩き始めて少ししたところで。


「瑠衣さ〜ん!」


後ろから、耳に馴染んだ声が聞こえてきた……気がした。


……いいや、違うわ。


空耳よ。


そう自分に言い聞かせて先へ進みかける──と、


「瑠衣さん、おはよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る