第55話
猪熊さんにそんな事を話す、万亀の姿がふいに頭に浮かんでくる。
きっとすごくうきうきした嬉しそうな感じで話したんでしょう。
私としてはそんなに喜ばれるほど大した事をした覚えはないんだけど。
猪熊さんは思いやりのある優しい微笑みで続けた。
「どうか、そのままのあなたで接して差し上げてください。
もちろん無理をして幸右様に付き合う必要はありません。
どうか、そのままで──」
猪熊さんが言う。
その口調はちっとも押し付けがましいところのない、しかも万亀にだけじゃなく、ちゃんと私の事も思いやってくれてる様な──……そんな口調と言葉だった。
だから私は猪熊さんに素直ににっこり微笑んで「──はい」とちゃんと返事した。
……無理をして万亀に付き合う必要はない、そのままの私で、か。
うん、なんだかちょっと吹っ切れた様な気がする。
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