第52話
◆◆◆◆◆
私と猪熊さんは、のんびりゆったりしたペースでいつもの私の帰宅路を行く。
万亀には猪熊さんを借りちゃって悪かったけど、それでもやっぱりあそこでリムジンの送迎を受けなくって良かったって思う。
そりゃあもちろんリムジンはゴージャスだし、ちょっとでも乗ってればその快適さも十分分かるけど、私はこーしていつも通り歩いて帰るのが一番落ち着くわ。
周りの目をそこまで気にすることもないし。
まぁ、隣を歩くイケメン執事の猪熊さんにはあちこちで女性たちの熱〜い視線が集まったりはしてるし、余計な仕事増やしちゃって申し訳ないとは思うけど。
ここまでの道中、私も猪熊さんも、特に何か話をしながら歩くっていうことはなかった。
だけど不思議と気詰まりな感じはしない。
むしろ何だかホクホクと温かい気分で歩いていくと、いつの間にやら昨日万亀を助けたあの河川敷の幅広の橋の下に出ていた。
ちらっと見た感じどーやら今日はあの不良グループたちもいないみたい。
私はパッと明るい顔で猪熊さんを見た。
ねっ、大丈夫だったでしょ?っていう視線だったけど、猪熊さんはそれに優しい微笑みで返してくれた。
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